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キース・リチャーズの、あの骸骨リング


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時計とジュエリー、自分なりのコーディネートを楽しむ人は多いと思います。私の場合、夏場はロレックスといった実用系が多くなるので、これから紹介するリングと相互が引き立つように感じます。ゴールドケースのドレスウォッチとでも、退廃的な貴族といったテーマで強引にあわせることもあります。
そこで今回、アクティブなリストウォッチとの相性もよく、一生涯着け続けたい男のジュエリー取材をロンドンで敢行しました。


屈強なる反骨精神の持ち主、ローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズ。宇宙空間から降り注いで来るかのような、高音が強調され粘りあるギターの音色に癒される人は多く、日本でも人気があります。


〈キース・リチャーズの不良哲学〉(写真)という書籍も刊行され、暴行事件や逮捕騒動、終身刑を言い渡される寸前までいってしまったドラッグ劇などを、強靱な精神力と思想により跳ね返し、無垢な魂にまで昇華してしまい、ブルースに立ち返りつつ自身のロックを創造し続けた足跡が披露されています。

そんなキースのトレードマークは、31年間にわたって指に着けてきたシルバー925製の骸骨リング(Deaths Head ring)。

前妻であり、ハリウッド女優のアニータ・パレンバーグの紹介で知り合ったデビット・コーツから、1978年の誕生日に贈られたもので、デビット・コーツがデザインし、親友のビル・ハケットと共に作製する〈COURTS AND HACKETT〉製です。

キースはデビット・コーツ氏について、「1966年以来、アートスクールのマフィア(悪友同士のような意味)時代からの親友だ」と述べており、デビット氏だけでなくビル氏と2人で1960年代、キースの自宅をちょくちょく訪れる間柄だったという。キースがピンク色に塗り替えたベントレーという高級乗用車でロンドンを駆け抜けた、スウィンギングロンドンという華々しい時代を、写真家のマイケル・クーパー、ロバート・フレイザーら、最先端のエッジが利いた音楽やアート、ファッションを世界に発信した、多くの友人たちと共有しているのです。

話は戻りますが、キースのオリジナル骸骨リングは、写真によって違う物に見えたりというトリッキーさもあって、ご本人は複数所有しているのでは、といったような諸説が飛び交ってきましたが、持っているのは1978年に贈られた1個のみ。それを現在まで、大事に着けていると伺いました。今回、ロンドンのsohoにある会員クラブにCOURTS AND HACKETTの2人を訪ねて確認させてもらったところ、「キースのデスヘッドリングは試作品を2個作り、そのうちの1個は顎の下にガードを設けなかったため着け心地が悪くて、3個目の完成品だけを1978年、キースの誕生日パーティが開かれたニューヨークの会場に持っていって渡しました」(デビット・コーツ氏)とはっきりと思い出してくれました。

近年になってキースが椰子の木から落ちて怪我をした、というニュースが届きましたが、その後に指も痩せてしまい、ぶかぶかになったためにリングをチェーンに通して首に吊していたそうです。そのまま泳いでいてカリブの海でなくした時には、懸賞金をかけて地元のダイバーらに探してもらい、無事に手元に戻ったというエピソードもキースらしいものです。

世界の超高級ブランド品など、なんでも選べる立場にいるキースが31年間、親友が作ったシルバーリングだけを片時も離さないというのは素晴らしいと思います。

その理由については、「綺麗に着飾っていようが階級が異なろうが、一皮むけば人間はみんな骸骨。それに自分はいつの日にか、100%の確率で死ぬ運命にある。だからこそ悔いのないよう生きたい」。こんな思想を象徴しているからではないでしょうか。

自分自身、20年以上前に、古井戸というデュオを解散直後の仲井戸麗市氏とキースの骸骨リングの話になり、似たようなデザインの指輪探しをスタートしました。東京都内を探し回っても見つからず、その3年後くらいにロンドンで作られた2種類のそれぞれ異なるメーカー品と遭遇したり、国産のレプリカこそ集まりだしたものの、デザイン・バランスとか完成度とかに違和感を持ったままでした。結局2008年まで自分にとっても究極至高の骸骨リング、COURTS AND HACKETTと出会うことはできませんでした。

というのもCOURTS AND HACKETTは、キースのお抱えジュエラーであり、一点物のオブジェもキースに収め、それ以外はロンドンのロイヤルアルバート美術館に収蔵されてしまったから。COURTS AND HACKETT製では奥さんのパティ・ハンセンが持っている結婚指輪、ボブ・ディランが持っているピルケース付き骸骨リング、エリック・クラプトンのジッポーケースなどもすべて、キースからのオーダー品です。

こうしたCOURTS AND HACKETTがこのほど、キースと共に、スカルモチーフのトレンドやオリジナルリングのレプリカの蔓延に驚くと同時に憂いて、遂に全てのスカルリングの原点ともいえる写真のNew Deaths Head ringを一般に向けてリリースしました。

このニューリングのモチーフも、キース愛用のオリジナルリングと同じで、COURTS AND HACKETTの2人の友人であるクライブ・パーカーという芸術家が所有する「ジョージ」というニックネームを持つ人間の頭蓋骨。

それは35歳という若さで亡くなった方の遺骨で、とても美しい状態にある。今回のニューリング作製のためにCOURTS AND HACKETTの2人が1年半借りて、観察しながら細部や手触り、表層などを精密にオブジェ化。

デビット・コーツ氏は、「6サイズごとにマスターモデルを作る作業だけで9ヶ月かかりました」。
また、ビル・ハケット氏は、「小さいころ、美術館でよろいかぶとなどを鑑賞して深い感銘を受けました。ですから私たちの作品には、刀のつばやよろいといった日本文化からインスピレーションによるものもあり、こうした文化を創造した末裔たちが、私たちのニューリングを気に入り、細部まで高く評価してくれるのはうれしいことです」という。

こうしたストーリーがあり、ゴールドスミスであり芸術家であるCOURTS AND HACKETTの作品だけに、さぞや高価なものかと思いきや、意外にもリーズナブル。その理由についてデビット氏は、「(300ポンド台)というプライスについては、仲間たちからも安価過ぎるとアドバイスされました。しかし銀製品ですし、世界中の、どんな職業の人でも無理なく着けてもらえるような値段にしたかったのです」という。

今後、個別注文に応じるようなことはないといいますが、New Deaths Head ringの18KやPt(プラチナ)バージョンが作られる可能性はありそうです。

ちなみにNew Deaths Head ringの第一号であるスペシャル・モデルは、昨年のうちにキースに届けられ、本人は近い将来、「いまのがもっと古くなったら、こちらを着けるよ」と話しているそうです。

ちなみにキースがステージでもプライベートでも、常に身に着けているものといえばCOURTS AND HACKETTのリング以外には手錠型のシルバーブレスがあります。「いつもポリスに捕まってばかりだから、手錠なら持ってるよ」(キース・リチャーズ)という発想から、キャンプ用品を見てキースがアイディアを出し、デザイン全体もキースが行ったといいます。それをかたちにするために1981年から翌年にかけて、COURTS AND HACKETTの2人が作ったそうです。このブレスのレプリカも世界中で作られ、日本のミュージシャンやアイドルも着けていますが、オリジナルは世界でただ一点だけ。
「親しき仲にも礼儀あり」(デビット・コーツ氏)ということから、このブレスレットは、キースからの依頼がない限りは市販されることはないようです。



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〈キース・リチャーズの不良哲学~なぜローリング・ストーンズは解散しないのか〉(ブルース・インターアクションズ刊行)。

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2人の友人であり、sohoにある前衛アーティストであるセバスチャン・ホースリー氏の家の前でデビット・コーツ氏(右)とビル・ハケット氏。扉には「ここには娼婦はいない」といった文言が記されています。



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COURTS AND HACKETT〈New Deaths Head ring〉

歯の部分は1個ずつ製作し、それらを繋げて裏側から強化。極小ドット、さらにブラッシングするなどの技法を実験的に組み合わせ、シルキーがかった独自の質感を持つ表面仕上げ。シルバー製。EUサイズ 16.2mm ~21.9mm。下記COURTS AND HACKETTの公式サイトから購入可能。価格は331ポンド(2009年5月現在)。
なお公式サイトには日本語の言語選択が可能となり、すべての頁を日本語で読むことができるようになりました。

COURTS AND HACKETT公式サイト
http://www.courtsandhackett.com/
by ISM-WATCH | 2009-05-20 17:39 | COURTS AND HACKETT
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松田朗
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