TiCTAC松崎充広氏に聞く/時計が売れるコンセプト
「時計を楽しむこと」がコンセプトのウォッチセレクトショップ〈TiCTAC〉(チックタック)は、G-SHOCKやディーゼルなどのファッション・ウォッチから、ハミルトンなどのスイスの本格派機械式時計まで、機能、デザイン性を重視してセレクト。ライフシーンに合わせたスタイリングやセンスのいい編集企画など、時計をファッションなどのいろいろな切り口で提案することから、男女を問わずオシャレに敏感な若年層を中心に人気だ。
シチズンの歴代クロノグラフで通称〈ツノクロノ〉というレトロモデルを現代風にアレンジした上で共同開発したり、デザイナーズブランドとのTiCTACコラボ商品も続々誕生させてきた。渋谷にあるフラッグシップショップや恵比寿のステーションビル内にある店舗では、洗練された都市型ライフスタイルを楽しむOLら女性客も多い。独自にディストリビュートする <シャウアー>など、海外ブランドの機械式クロノグラフや、価格と品質のバランスがよく全国的に売れているハミルトンの航空時計を買いに来る本格的な時計愛好家の姿も見られる。
こうして全国の好立地に省スペースを確保して展開するTiCTACをはじめ、アンティークウォッチや直接買い付けを行うドイツブランドの時計などをセレクトする〈SPINDLE〉、「トレンド+オンリーワン」をキーワードに、腕時計の最旬アイテムなどを揃える〈TORQUE〉の3つの時計業態を展開する企業、㈱ヌーブ・エイ執行役員 TiCTAC事業部長の松崎充広さんに、現在のような経済状況の中でもTiCTACが好調である要因や、今後の展開などについて伺ってみました。
現在(2009年7月上旬)、松崎さんが管理する店舗は全国に52店舗。これに開店予定が4店舗あるという。「昨年からの1年間で8店舗増えていて、あと2年間で70店舗体制を目指しています」という。空前の不況下にあって、TiCTACが業績を伸ばし店舗を拡大しつづけるポイントについては、売り場面積が狭くとも好立地を選び、商品を厳選、お客様ありきの独自サービスを打ち出すこと。
独自のメンバーズシステムを導入して、会員には電池交換500円ほか修理代金20%オフなどの特典を付与、前回実施した下取りキャンペーン<もったいないウォッチエクスチェンジ>では、予想を大幅に上回る7,500人を集客したそう。
店舗ごとの世界観にも気を配り、「各店舗ごとに内装を工夫したり、什器類も変えて独自性を追求しています。品揃えに関しては、各店舗のバイヤーに権限を与えてマンパワーを十二分に引き出せるよう考えています。また、狭い空間であっても厳選した少数精鋭の商品を展示。個々の商品の持つマキシマムパワーをいかんなく出すため、その店のマグロでいえば「トロ」的なホットゾーンをつくり、どんなラインアップで顧客の歓心を買うのか?について、個々の現場のスタッフみんなでアイデアを出し合っています」。
時計を人に例えると、「狭いショーケースにたくさん陳列すると、個々の商品がお互い魅力を打ち消しあってしまうこともあります。たくさんの中から絶世の美人を1人見つけてもらうのか? それともあきの来ない愛らしい癒し系のプチ美人を何人か探してもらうのか? いろんなバランスで商品個々の見え方が変わってくる。こうしたことも常に考えています。時計がたくさんあっても何にも選べないような店作りはしたくないんです。うちの店を車に例えると【ミニクーパー】なんです。ミニクーパーは小さくて排気量も少ないですが、だから燃費もまぁまぁいい。外装デザインはコンテンポラリーで今風ですし、もちろんインテリアもPOPで女性受けがいい。小粒だけれど、だからこそのファントゥドライブもあるし、そんな理屈を超えてもかわいくって存在感があるでしょう?そんな感じを目指しているんです」。
続けて、「うちの店は立地こそいいところを選びますが、10坪もあれば十分なのです。当然、家賃は高い場所ですが、先に述べたような展開を行っているので、坪当たりの売り上げがいい。10坪で年商2億円の店舗もあるんですよ」。